今日のキーワード「in a cast」(ギプスをしている) - 「錦織、全米オープン欠場」 | テニス | 全米オープン

こんにちは。
テニス英語ニュース「Around the Court」です。


お盆休み中に残念なニュースが入って来ました。

今年右手首のケガに苦しみ、シンシナティ・マスターズも欠場していた錦織選手が、今年中の欠場を発表しました。

ケガの状態を診断した結果、右手首の腱を部分断裂しているそうです。非常に心配です。

年内欠場に伴い、今年最後のグランドスラム・全米オープンの欠場も決まりました。

今日はそのニュースを取り上げます。

錦織圭、全米オープン2016 (画像:US Open Tennis)

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1.今日のキーワード
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【in a cast    ギプスをしている】

今日のキーワードは「in a cast」です。

動詞「cast」には「型にはめ込む」という意味があります。
骨や腱などが損傷したとき、その部位を「型にはめ」て固定するのがギプスです。
名詞「cast」には「ギプス」の意味があります。

前置詞「in...」は「...を身に付けて」という意味で使われているので、
「in a cast」で「ギプスをしている」という意味になります。

同じような意味の表現に「wear a cast」、「apply a cast」などもあります。

本文では、右手首の腱を部分断裂した錦織選手が「in a cast」の状態であると記述しています。

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2.ボキャブラリー
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・Kei Nishikori : 錦織圭。日本国籍。27歳。右利き、両手バックハンド。ツアー優勝11回。現在9位 (最高4位)。
・US Open : 全米オープン。テニス4大大会であるグランドスラムの一つ。ハードコート。開催地はアメリカ・ニューヨーク。
・tendon : 腱
・Marin Cilic : マリン・チリッチ。クロアチア国籍。28歳。右利き、両手バックハンド。グランドスラム優勝1回、マスターズ優勝1回、ツアー優勝17回。現在6位 (最高6位)。
・Flushing Meadows : フラッシング・メドウズ・コロナ・パーク。アメリカ・ニューヨークにある公園施設。全米オープンの開催地。
・Melbourne : オーストラリア・メルボルン。全豪オープンの開催地。
・Paris : フランス・パリ。全仏オープンの開催地。
・Novak Djokovic : ノバク・ジョコビッチ。セルビア国籍。30歳。右利き、両手バックハンド。グランドスラム優勝12回、マスターズ優勝30回、ツアー優勝68回。現在5位 (最高1位)。
・Stan Wawrinka : スタン・ワウリンカ。スイス国籍。32歳。右利き、片手バックハンド。グランドスラム優勝3回、マスターズ優勝1回、ツアー優勝16回。現在4位 (最高3位)。
・Cincinnati : アメリカ・シンシナティ。ウエスタン・アンド・サザン・オープンの開催地。マスターズ1000大会の一つ。ハードコート。
・swelling : 腫れ。

上記フレーズに関する知識があると、原文をより深く理解できます。

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3.原文
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【Nishikori to miss US Open with wrist injury】

Former US Open finalist Kei Nishikori will miss the last Grand Slam of the season after tearing a tendon in his right wrist. The injury will keep him sidelined for the remainder of the year.

(中略)

“After consulting with all of them, it has become clear that Kei has a tear in one of the tendons in the right wrist. At this stage we have elected not to do surgery and Kei is in a cast. After the swelling comes down in the next weeks, we will evaluate next steps. Kei will withdraw from all the 2017 tournaments and work hard to be ready for next year.”

(後略)



※ 全文は引用元をご参照ください。

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4.日本語訳
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【錦織、手首のケガにより全米オープン欠場】

全米オープン決勝にも進出したことがある錦織圭が、右手首の腱断裂のため欠場する。錦織はケガのために、今年残りの大会をすべて欠場する。

27歳の錦織は2014年に決勝進出している。両者初のグランドスラム決勝の舞台でマリン・チリッチに敗れている。

錦織のグランドスラム最高成績は、全米オープン準優勝である。昨年の大会では準決勝に進出した。他のグランドスラムでは、ベスト8以上の成績を残せていない。全豪オープンで3回、全仏オープンで2回、準々決勝で敗れている。

錦織は全米オープンを欠場する3人目のトップ10選手になる。2回優勝のノバク・ジョコビッチ(ひじ)、前年優勝者のスタン・ワウリンカ(ひざ)も欠場を表明している。

錦織陣営からの発表によると、5人の専門家の診察を受け、2018年の復帰を目指している。

「2日前にシンシナティで練習中、サーブを打った時、手首が裂ける音がした。MRI検査のために病院に直行した。昨日、大リーグのピッチャーを多く診察していることで有名な専門家の診察を受けた。今日、セカンドオピニオンを得るために、別の専門家にも診察してもらった。MRIの検査結果をさらに3人の専門家に送り、彼らの意見も求めた」

「彼らの診察により、右手首の腱の一部が断裂していることが判明した。現段階では手術しない意向であり、ギプスで固定している。数週間で腫れが引いた後、次の治療を検討する。錦織は今年のすべての大会を欠場し、来年に向けてトレーニングする」

錦織の欠場により、ティアゴ・モンテイロが本戦に繰り上がる。

全米オープンは、8月28日から9月10日まで開催される。


(Translated by tennisshiro)

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5.関連動画
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2016 Barclays ATP World Tour Finals: Wawrinka-Nishikori; Murray-Cilic Highlights



(動画:Tennis TV)

昨年のツアー・ファイナルズ・予選RRのハイライト動画。
今年中の欠場を決めた錦織選手とワウリンカ選手の試合、
ケガに苦しんでいるマレー選手とチリッチ選手の試合のハイライトです。
このレベルの選手がツアーに参加できないのは、損失以外の何ものでもありません。

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6.その他のニュース
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7.編集後記
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今日は錦織選手の右手首ケガおよび今季欠場の話を取り上げました。非常に残念ですし、ケガの状態が心配です。

ATPツアーのことをよく知らない人が「試合に出過ぎ」とか「ケガが多過ぎ」と言っているのをたまに見かけます。錦織選手の名誉のために、試合に出ること、ケガが多いことについて説明しておきます。
(ここから長いので、太文字だけ追うことをおすすめします)



まず試合出場に関しては、前年末トップ30の選手は翌年「Commitment Player」としてツアーを回る義務が生じます。「Commitment Player」は、グランドスラム(GS)4大会、マスターズ(MS)8大会、ATP500の任意4大会、合計16大会に出場する義務があります。

「Commitment Player」は出場義務のある大会に参加しないと、強制的に「0ポイント」がランキングポイントとして計上されます。「Commitment Player」でなければ他の大会で取り戻せますが、「Commitment Player」はそれができません。
(ランキングポイントの対象は、直近52週間における成績上位18大会のポイント)


また不当に欠場した場合、翌年の出場が制限されることもあるので、「Commitment Player」はケガなどの正当な理由が無い限り、この義務を果たす必要があります。

錦織選手は2011年末にランキングが25位になり、翌2012年から6年連続で「Commitment Player」として最低16大会に出場しています。錦織選手のような実力のある選手になると、ベスト16やベスト8に当然のように勝ち上がるので、わざと負けない限り、どうしても試合数が増えてしまいます。


次にケガについてです。試合出場が増えれば増えるほど疲労は蓄積しますし、「Commitment Player」は無理をして試合に出る機会が多くなるので、当然ケガのリスクが高まります。

また大会のレベルが上がるほど、当然ゲームレベルが上がり、単純なミスをしてくれる対戦相手は少なくなります。コース・スピードともに厳しいサーブ、速いタイミングのリターン、深いストローク、厳しいアングルショット、前後の揺さぶりなど、肉体と精神に負荷がかかる状況が増えます。

下位グレードの大会よりも、トップ30の選手が参加するマスターズ以上の大会ではその傾向は強いですし、それに伴う肉体的・精神的なダメージも蓄積しやすくなります。


錦織選手がプロとして本格的に活動を始めた2008年以降の試合数は以下の通りです。

2016   79試合
2015   70試合
2014   68試合

2013   55試合
2012   55試合
2011   58試合   ※年初98位→年末25位
2010   12試合   ※Ch 31試合
2009   10試合   ※右ひじ手術
2008   28試合   ※Ch 17試合

(Ch = Challenger)


まず2011年に急激に試合数が増えています。この年は「プロジェクト46」(修造さんの当時日本最高46位突破が目標)が組まれています。

年齢21歳、その前2年間の試合数が少なく体がフレッシュだったので、目標達成のためにほぼ毎週大会に出場しています。キャリア最多の年間26大会(デ杯含む)に出場しています。

2012年以降は「Commitment Player」としての活動期間になります。トップ10に入った2014年以降試合数が増えていることがわかります。より深いラウンド(準決勝、決勝)まで勝ち抜く大会が多くなったため、それに伴い試合数が増えています。(2014年の出場大会数は19大会)


さらに2016年79試合の内訳は以下の通りです。

合計:79  -  TF:4GS:19MS:27、500:15、250:6、五輪:6、デ杯:2
(TF = Tour Final、GS = Grand Slam、MS = Masters)


ハイレベルなマスターズ以上の大会(TF、GS、MS)が50試合、全体の6割以上を占めています。


この数字を錦織選手と同年代の選手の2016年の試合数と比べてみましょう。

まず錦織選手と同じ「Commitment Player」ですが、トップ10に入ったことがないロベルト・バウティスタ・アグート選手(29歳、ランク14位)の試合数を見てみましょう。

合計:71  -  内訳 TF:-GS:14MS:21、500:13、250:17、五輪:4、デ杯:2

試合数は合計71試合で錦織選手とほぼ同等ですが、MS以上の大会は35試合で錦織選手より15試合も少ないです。錦織選手と比べると、ハイレベルなインテンシティの高い試合をしている頻度が低いです。


次に「Commitment Player」になったことがなく、ランキングも50位以下のドナルド・ヤング選手(28歳、ランク57位)の試合数は以下の通りです。

合計:47 (予選8)  -  内訳 TF:-GS:6MS:4、500:15 (予選6)、250:22 (予選2)、五輪:-、デ杯:-

試合の絶対数も錦織選手より30試合以上少ないですし、MS以上の大会は10試合しか戦っていません。


この数字から言えることは、「Commitment Player」になると当然ですがMS以上のハイレベルな大会で戦う機会が増える(3倍以上)こと、さらにトップ10クラスの実力者になると、MS以上の大会の試合数トップ10圏外の選手よりも多くなる(約1.5倍)ことです。
(特定選手の特定年度のデータを使用していますが、この傾向が大きく変わることはありません)


要するにトップ10の選手は、そうでない選手に比べて体と心を削って戦う機会が多くダメージが蓄積しやすく、ケガのリスクが高まるということです。


ヤング選手は錦織選手と同年代でトップ100にも入っている実力者です。ですが「Commitment Player」になったことがなく、(ダブルスの試合を含めても)年間の試合数自体が少ないので、錦織選手に比べると疲労・ダメージの蓄積がはるかに少なく体もフレッシュだと思われます。( ⇒ ケガのリスク低い)

またアグート選手「Commitment Player」になったのは2015年、今年で3年目です。今年6年目の錦織選手に比べると、インテンシティが高いハイレベルな試合をしている期間が短いので、疲労・ダメージの蓄積が少ないことは容易に想像できます。( ⇒ やはりケガのリスク低い)


以上長くなりましたが、「Commitment Player」を6年続け、トップ10を3年続けている錦織選手が、ケガをしやすい環境で戦って来たことが少しでも伝われば・・・と思っています。


このことは錦織選手だけではなく、同じく今季欠場を発表したジョコビッチ選手ワウリンカ選手、今季ケガに苦しみ続け1位陥落が決まっているマレー選手にも言えることです。

だからこそATPには「Commitment Player」の出場義務を緩和し、ケガのリスクが低い環境を整備してもらいたいと思っています。


(参考)「Commitment Player」の出場義務緩和について - ジョコビッチ、ウィンブルドン棄権 -
https://ardthect.blogspot.jp/2017/07/no-way-out.html


(了)


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