今日のキーワード「back on track」(正しい方向に戻す) - 「キリオス、復調を喜ぶ」 | テニス | W&Sオープン

こんにちは。
テニス英語ニュース「Around the Court」です。


シンシナティ・マスターズ最終日、男子シングルスの決勝戦が行われました。

マスターズ決勝進出が初めての2人の対戦でした。最後までサーブ・ストロークともにスキを見せなかったディミトロフ選手が勝利し、マスターズ初優勝を果たしました。

錦織選手(1989)、ラオニッチ選手(1990)、ゴファン選手(1990)、ディミトロフ選手(1991)らの世代を称して「Lost Boys」と呼ぶ人もいましたが、この世代から初のマスターズ優勝者が出ました。

本来なら錦織選手にも続いて欲しいところですが、今はケガの治療に専念してください。十分な体調を取り戻し、不安の無い状態でツアーに戻って来て欲しいです。

さて、ディミトロフ選手とともに今大会を盛り上げたのが、準優勝したキリオス選手です。

キリオス選手が大会後にインタビューに答えています。今日はそのニュースを取り上げます。

ニック・キリオス、シンシナティ・マスターズ (画像:ATP Tour, Inc.)

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1.今日のキーワード
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【back on track    正しい方向に戻す】

今日のキーワードは「back on track」です。

名詞「track」は「進路」や「航路」の意味で「進むべき方向性/道」を表しています。
「on track」は「進むべき道に乗っている」つまり「正しい方向に進んでいる」という意味です。
「off track」は逆に「正しい方向から外れている」という意味になります。

副詞「back」(戻って)で修飾されているので、「back on track」は「正しい方向に戻す」という意味になります。
「back on track」には「off track」(外れた状態)から「on track」(正しい状態)に戻すという意味が込められています。

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2.ボキャブラリー
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・Nick Kyrgio : ニック・キリオス。オーストラリア国籍。22歳。右利き、両手バックハンド。ツアー優勝3回。現在18位 (最高13位)。
・Cincy : アメリカ・シンシナティ。ウエスタン・アンド・サザン・オープンの開催地。マスターズ1000大会の一つ。ハードコート。
・Masters 1000 : マスターズ1000。ATPワールドツアーのカテゴリー。グランドスラムに次ぐ格付けの大会。年間9大会開催。
・Grigor Dimitrov : グリゴール・ディミトロフ。ブルガリア国籍。26歳。右利き、片手バックハンド。ツアー優勝7回。現在9位 (最高8位)。
・Rafael Nadal : ラファエル・ナダル。スペイン国籍。31歳。左利き、両手バックハンド。グランドスラム優勝15回、マスターズ優勝30回、ツアー優勝73回。現在1位 (最高1位)。
・David Ferrer : ダビド・フェレール。スペイン国籍。35歳。右利き、両手バックハンド。マスターズ優勝1回、ツアー優勝27回。現在25位 (最高3位)。
・Jack Sock : ジャック・ソック。アメリカ国籍。24歳。右利き、両手バックハンド。ツアー優勝3回。現在17位 (最高14位)。キリオスとはダブルスを組んでいる。
・US Open : 全米オープン。テニス4大大会であるグランドスラムの一つ。ハードコート。開催地はアメリカ・ニューヨーク。

上記フレーズに関する知識があると、原文をより深く理解できます。

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3.原文
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【Kyrgios Pleased With Turnaround, Cincy Final Run】

Nick Kyrgios can hardly believe the turnaround himself.

Three weeks ago, the Aussie was down 6-3, 3-0 against Tennys Sandgren of the U.S. before having to retire from his second-round match at the Citi Open in Washington, D.C. because of right shoulder pain.

(中略)

He had kind words for Sunday's victor, Dimitrov, who was also playing in his first Masters 1000 final and won his third title of the season.

“It couldn't have gone to a more deserving player. He's really got his game back on track. I think he's starting to be where I think I pictured him being,” Kyrgios said. “He struggled a year ago with his game, but now he's playing some really good tennis.”

(後略)



※ 全文は引用元をご参照ください。

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4.日本語訳
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【キリオス、復調を喜ぶ - シンシナティ準優勝】

ニック・キリオス自身も復調を信じることができないだろう。

3週間前、ワシントンD.C.で開催されたシティ・オープン初戦で、キリオスはテニーズ・サンドグレンと対戦した。その試合中、3-6、0-3でリードされているとき、右肩の痛みにより棄権を余儀なくされた。

日曜日、シンシナティで開催されたW&Sオープンで、自身初のマスターズ決勝を戦った。

「自分の過去の状態を振り返ると、マスターズ大会で初めて決勝に来るとは想像もしなかった。だから、この結果には満足している。どん底からここまで来られたことには、驚くばかりだ」とキリオスは語った。

初のマスターズ優勝には届かなかった。ブルガリアのグリゴール・ディミトロフに7-5、6-3で敗れた。しかし22歳のキリオスは、今週のテニスへの取り組みとプレーには、喜びを感じている。

キリオスは決勝にたどり着くまでに、第9シードのダビド・ゴファン、ウクライナのアレクサンダー・ドルゴポロフ、クロアチアのイボ・カルロビッチ、2人のスペイン人レジェンド-今週世界1位に返り咲いたラファエル・ナダル、2014年準優勝のダビド・フェレールを倒している。

「1回戦は本当に苦しかった。2回戦はドルゴポロフとのタフな試合を切り抜けた。コート上の感覚が徐々に戻ってきたが、最初は試合を楽しんでいなかったし、コートに立ちたくなかった。外的要因が僕の感情に影響していた。本当に自分でも理解できなかった。今日の試合には負けたけど、今は素晴らしい気分だ。結果にとても満足している」

今日の試合に勝ったディミトロフに対しても、キリオスは思いやりのある言葉を口にした。ディミトロフも自身初のマスターズ決勝を戦い、今年3回目の優勝を果たしている。

「ディミトロフほど優勝にふさわしい選手はいない。彼は自分のテニスを正しい方向に戻した。本来あるべき姿に近づき始めたと思う。1年前の彼はテニスと格闘していた。だが今では本当に良いテニスをしている」

キリオスはアメリカのジャック・ソックと練習するために、カンザスに向かう。その後、全米オープンに出場し、昨年の3回戦以上の成績を目指す。(マーチェンコに敗北)

「感覚は良い。全米オープンには少し興奮している。出場して、何試合か勝てればうれしい」とキリオスは語った。


(Translated by tennisshiro)

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5.関連動画
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Montreal and Cincinnati 2017: The best of Nick Kyrgios



モントリオール、シンシナティ大会期間中のキリオス選手名場面集。

ファンと練習コートでボールを打ち合っている模様、
フェレール選手から4年前に授かった教訓「learn to suffer」について語る場面、
カルロビッチ戦でウィナーを決めた後、観客とハイタッチを交わす場面、
カメラサインでテロに遭ったバルセロナにメッセージを送る場面などが収められています。


私が一番印象に残っている、ナダル選手に対する股抜きショットは入っていません。
フェレール戦でも2ndセット・タイブレーク前に打ちましたが、やはり入っていません。
特にナダル戦のショットは、大先輩に対する侮辱的なプレーとして「お蔵入り」になったのかもしれません・・・。

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6.その他のニュース
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7.編集後記
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今日はシンシナティ・マスターズで準優勝したキリオス選手を取り上げました。

キリオス選手の試合は、今大会6試合中4試合を見ています。キリオス選手がインタビューでも語っている通り、1回戦のゴファン戦と準々決勝のナダル戦では完全な別人になっています。

1回戦のキリオス選手は、いつ棄権してもおかしくない様子で戦っています。クイーンズで負傷した臀部が痛いのか、ワシントンで負傷した右肩が痛いのか、よくわからないのですが、サービスのルーティンに入るたびに頭を左右に振って、何とか試合を続けている感じでした。

対戦相手のゴファン選手も、全仏で痛めた左足の状態が明らかに良くありませんでした。動きに精彩がないし、1セット終了後にメディカルタイムアウトを取って、治療を受けています。テニスの試合と言うよりも、どっちが先に棄権を申し出るか、単なる我慢比べのような状態でした。

それだけに準々決勝のナダル戦は、ある意味衝撃的でした。1回戦の弱々しい感じはまったく無く、ビッグサーブと速いテンポのストロークで、ナダル選手を相手に先手を取り続けました。

2、3回戦は見てないのですが、「何があったの?」と思うくらいの豹変でした。3回戦のカルロビッチ戦では、コート上でダンスのステップを踏んだり、観客とハイタッチするなど、キリオス選手らしいパフォーマンスを見せています。それに対して観客から拍手喝采を受けるうちに、テニスが楽しくなり、モチベーションを取り戻したのかもしれません。

良くも悪くも気分屋のキリオス選手なので、良い方向にスイッチが入ると手が付けられなくなります。おかげでナダル戦、フェレール戦は緊張感が高く、スーパーショットも随所に飛び出すなど、好ゲームが見れました。


キリオス選手の話はこれくらいにして、最後にディミトロフ選手にも触れておきます。

前文でも触れた通り、世代的には錦織選手やラオニッチ選手と同世代です。この1989年-1991年生まれの世代は、マスターズとグランドスラムでタイトルを取っていなかったので「Lost Boys」(失われた少年たち)と呼ぶ人もいました。

BIG4の若い方の2人、ジョコビッチ選手、マレー選手(ともに1987年生まれ)と年が近いので、最も直接的な「被害」を受けている世代であることは間違いありません。錦織選手もマスターズ決勝進出3回のうち2回は、ジョコビッチ選手に敗れています。決勝戦に限らず「ジョコさえいなければ・・・」と思ったことは数知れずです。

その「Lost Boys」からやっとマスターズ優勝者が出ました。今大会のディミトロフ選手は、プレーが高いレベルで安定していたし、チャンスをつかもうと集中力を高めているのが伝わってきました。

トップ10との対戦が無かったのも大きいと思います。元々トップ10クラスの実力を持っているディミトロフ選手が、ベストに近い状態で自分よりもランキング下位の選手と対戦したので、ディミトロフ選手が勝つのは当然の結果かもしれません。

これでディミトロフ選手はBIG4以外では8人目のマスターズ優勝者になりました。
(現役選手に限定した場合)


「Lost Boys」と呼ばれた世代に対して、刺激を与えたことは間違いありません。20歳前後のNextGenも、A.ズベレフ選手に引っ張られる形で急成長しています。その間には、キリオス選手、ティエム選手、プイユ選手らの若手もいます。

1週間後に全米オープンが開幕しますが、誰が優勝するのかますます分からなくなりました。フェデラー選手の体調が万全でない場合はなおさらです。

各世代間、各世代内で激しくぶつかり合う面白い試合を期待しています。



(了)


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