今日のキーワード「pull the plug on」(息の根を止める) - 「ベルダスコ、全仏1回戦でズベレフを倒す」 | テニス | 全仏オープン

こんにちは。tennisshiroです。
 
全仏オープン3日目、日本のエース・錦織選手が1回戦に登場し、見事に勝利しました。

立ち上がりはギアが上がらず、ブレークポイントを握りながらもキープされる、もどかしい展開が続きました。第2セットに入り、7度目のチャンスで初めてブレークに成功すると、その後は要所でブレークをして3セットを連取。セットカウント3-1で勝利しました。

相手のコキナキス選手はビッグサーブだけでなく、フォアのストロークにも力がありました。そのフォアでオーバーパワーされることもなく、長いラリーはほぼ錦織選手が制していました。

最近は右手首負傷の影響のためか、長いラリーで我慢できず、無理に展開してミスをするパターンが多くなっていました。ですが昨日の試合ではそのようなミスも少なく、長いポイントを取ることができていたので、この点は大きな収穫だと思います。

2回戦は1日置いて、地元フランスのシャルディー選手と対戦する予定です。
 
さて1回戦でちょっとした波乱が起きました。
前哨戦のローマで優勝し、全仏でも上位進出が期待されていたズベレフ選手が、初戦で姿を消しました。
 
今日はそのニュースを取り上げます。

フェルナンド・ベルダスコ、全仏オープン(画像:Tennis Now
 

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1.今日のキーワード
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【pull the plug on    息の根を止める】

今日のキーワードは「pull the plug on」 です。
動詞「pull」は「引っ張る」、名詞「plug」は「電源プラグ」なので、
「pull the plug on ...」で「...の電源を引き抜く」、「...への電力供給を断つ」という意味になります。
病院において「生命維持装置への電力供給を断つ」つまり「生命維持装置を外す」という意味で使用されることもあります。
そこで「pull the plug on ...」には、生命維持装置を外して「...の息の根を止める」という意味があります。
 

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2.ボキャブラリー
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・Fernando Verdasco : フェルナンド・ベルダスコ。スペイン国籍。33歳。左利き、両手バックハンド。ツアー優勝7回。現在37位 (最高7位)。
・Alexander Zverev : アレクサンダー・ズベレフ。ドイツ国籍。20歳。右利き、両手バックハンド。マスターズ優勝1回、ツアー優勝4回。現在10位 (最高10位)。
・RG : Roland Garros。ローラン・ギャロス。全仏オープンの会場。しばしば全仏オープンそのものを指す。
・Grand Slam : グランドスラム。テニス4大大会のこと。
・Madrid : マドリード・オープン。マスターズ1000大会の一つ。クレーコート。開催地がスペイン・マドリードであることから一般的に「マドリード」と呼ばれる。
・Rafael Nadal : ラファエル・ナダル。スペイン国籍。30歳。左利き、両手バックハンド。グランドスラム優勝14回、マスターズ優勝30回、ツアー優勝72回。現在4位 (最高1位)。
・Australian Open : 全豪オープン。テニス4大大会であるグランドスラムの一つ。ハードコート。開催地はオーストラリア・メルボルン。
・Novak Djokovic : ノバク・ジョコビッチ。セルビア国籍。30歳。右利き、両手バックハンド。グランドスラム優勝12回、マスターズ優勝30回、ツアー優勝67回。現在2位 (最高1位)。
・Rome : BNLイタリア国際。マスターズ1000大会の一つ。クレーコート。開催地がイタリア・ローマであることから一般的に「ローマ」と呼ばれる。
・Masters Series : マスターズ1000。ATPワールドツアーのカテゴリー。グランドスラムに次ぐ格付け。年間9大会開催される。
・confirme the break : (ブレイク後の)サービスをキープする。ブレークで得たリードをサービスキープにより確かなものにすること。
・reel off : 巻き取る。
・run around one's backhand : バックハンド側に回り込む。回り込んでフォアで打ち込むことを狙う動き。
・lanky : (手足が)ひょろ長い。
・unforced error : アンフォーストエラー。相手の打ちやすいボールを相手コート内に返球できないこと。相手の速いサーブやパッシングショット等を返球できない場合は「forced error」(フォーストエラー)になる。
・horrid : 実にひどい、非常に悪い。
・trail : リードを許す、遅れをとる。
・double fault : ダブルフォルト。サーブを2回連続で相手サービスエリア内に入れられないこと。相手ポイントになる。
・Pierre Hugues-Herbert : ピエール=ユーグ・エルベール。フランス国籍。26歳。右利き、両手バックハンド。ツアー優勝なし。現在82位 (最高68位)。
 
上記フレーズに関する知識があると、原文をより深く理解できます。
 

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3.原文
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【Verdasco Topples Zverev In RG First Round】 

Conversing near the net last night, Fernando Verdaso and Alexander Zverev successfully lobbied the tournament referee to suspend their first-round clash due to fading light last night.

Verdasco pulled the plug on Zverev today.

Contesting his 56th consecutive Grand Slam tournament, Verdasco toppled the ninth-seeded Zverev, 6-4, 3-6, 6-4, 6-2, reaching the Roland Garros second round for the 12th straight year.

The match began yesterday with the pair splitting sets before both agreed to halt the match while light still remained.

That decision benefitted the 33-year-old Verdasco, who fell to Zverev, 7-5, 6-3, in Madrid earlier this month.

It was Verdasco’s first career victory over a Top 10 opponent at Roland Garros and his first major Top 10 win since he stunned compatriot Rafael Nadal in the 2016 Australian Open first round.

The 20-year-old Zverev did not face a break point conquering reigning Roland Garros champion Novak Djokovic in the Rome final to capture his first career Masters Series championship earlier this month and crack the Top 10 for the first time.

When play resumed today, Zverev broke for 2-1 then confirmed the break.

Firing his forehand with ambition, Verdasco reeled off five of the next six games. Targeting the German’s forehand wing, Zverev broke in the 10th game to snatch the third set.

The 37th-ranked Spaniard's conviction and commitment to running around his backhand and lash his twisting topspin forehand into the corners grew as the fourth set progressed. 

Ultimately, Zverev was his own worst enemy. The lanky former junior world No. 1 committed 50 unforced errors and cracked his racquet in frustration during the fourth set.

A double fault preceded three unforced errors as Zverev played a horrid game dropping serve to trail 0-2 in the fourth set. 

An aggressive Verdasco broke again in the eighth game to close a two hour, 52-minute conquest spread over two days against an opponent 13 years his junior.

Verdasco will play Frenchman Pierre Hugues-Herbert in round two.


(引用元 Tennis Now:
 

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4.日本語訳
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【ベルダスコ、全仏1回戦でズベレフを倒す】 

昨日夜、フェルナンド・ベルダスコとアレクサンダー・ズベレフはネット近くで話し合い、主審に圧力をかけて、1回戦の試合を日没延期することに成功した。

そして今日、ベルダスコがズベレフの息の根を止めた

56大会連続でグランドスラムに参戦しているベルダスコは、第9シードのズベレフを、6-4、3-6、6-4、6-2で下し、12年連続で全仏オープン2回戦に駒を進めた。

試合は昨日開始し、まだ明るさが残る中、試合の一時中断が決まるまで、両者が1セットずつを分け合っていた。

その決断は、33歳のベルダスコに有利に働いた。ベルダスコは今月初めマドリード・オープンで、ズベレフに7-5、6-3で敗れていた。

ベルダスコは、全仏オープンではキャリア初、グランドスラムでは2016年全豪オープン1回戦で同胞のラファエル・ナダルに勝利して以来、初めてのトップ10に対する勝利を収めた。

20歳のズベレフは、今月初めBNLイタリア国際決勝で、全仏オープン前年覇者のノバク・ジョコビッチを圧倒し、ブレークポイントを1度も与えなかった。その結果、キャリア初のマスターズ・タイトルを獲得し、初めてトップ10入りした。

今日試合が再開すると、ズベレフはブレークに成功してゲームカウントを2-1にし、その後のサービスもキープした。

しかしベルダスコは、意欲的なフォアの強打を打ち込んで、続く6ゲーム中5ゲームを取り返した。ズベレフのフォアハンドを狙い、第10ゲームをブレークし、第3セットを奪取した。

世界37位のベルダスコは、第4セットが進むにつれて、バックハンド側に回り込み、回転の効いたフォアのトップスピンをコーナーに打ち込むことに確信を持ち、それを実行に移した。 

最終的にズベレフは自滅した。元ジュニア世界1位で手足の長いズベレフは、50本のアンフォーストエラーを犯し、第4セット中にはフラストレーションでラケットを破壊した。

ズベレフはダブルフォルトに続いて、3本のアンフォーストエラーを犯し、非常に悪い形でサービスゲームを落とし、第4セットで0-2のリードを許した。 

攻撃的なベルダスコは、第8ゲームでも再びブレークし、13歳年下の相手に対して、2日にわたって行われた2時間52分の試合を制した。

ベルダスコは2回戦でフランスのピエール=ユーグ・エルベールと対戦することになっている。

 
(Translated by tennisshiro)

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5.関連動画
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Verdasco Rifles Mammoth Forehand Hot Shot Miami 2017

 


今年のマイアミ・オープン3回戦、錦織選手との対戦で見せた得意のフォアハンド。
錦織選手のフォアの強打をブロック気味にしのぐと、リターンは浮き球になります。
錦織選手は狙いすまして、バックハンドのクロスを打ち込みますが、起死回生のカウンターを決めました。
スピード、コース、回転ともに申し分なし。錦織選手も苦笑いするしかありません。
 

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6.その他のニュース
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7.編集後記
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ベルダスコ選手は強いです。疑いの余地はありません。

左のフォアハンドからフラット系のパワーショット、回転系のスピンボールやムーンボール、トップスピンロブからドロップショットまで多彩なショットを打ち分けることができます。

しかもベテランだけあって、ゲーム分析能力に長けていて、ゲーム全体の流れや相手の長所・短所、自分の有効なショットや攻撃パターンを的確に把握することができます。昨年のIPTLで同じチームになり、ダブルスでペアを組んだ錦織選手もベルダスコ選手のことを「頭がいいし、作戦を組み立てて、いろいろとアドバイスをくれる。いいコーチになりそう」と評していました。

同じスペイン出身の左利きと言えばナダル選手ですが、クレーキングのナダル選手が少し後ろのポジションで構えて、強烈なスピンショットをコーナーに打ち分けるのに対して、ベルダスコ選手はベースラインから下がらず、より速い展開の仕掛けをすることもできます。

「なんでこの人が37位でノーシードなの?」という感じです。そのベルダスコ選手に1回戦で当たってしまったズベレフ選手は不運としか言いようがありません。

この試合も1セット目はベルダスコ選手が先取、2セット目をズベレフ選手が取り返し、これからズベレフ選手が巻き返すか、というタイミングで日没サスペンデッドになりました。実はこの裁定が下されたとき、時間は夜9時前だったそうですが、まだ日の光は残っており、ゲームを続行しようと思えばできたそうです。

そのときにサスペンデッドを持ち掛けたのが、ベルダスコ選手でした。会話の具体的な内容まではわかりませんが、たぶん「ちょうどセットが終わったし、もう9時前で日も暮れかかってるし、一旦中断しない?運営の人は9時半までプレイできるって言ってるけど、どう考えても試合終わらないよね?1-1でタイだし、区切りがいいし、今日はここで一旦中断しよう」と若いズベレフ選手を丸め込んだに違いありません。

現役引退後テニス解説をしている元世界1位のマッツ・ビランデル氏は、この判断を「rookie mistake」(新人のミス)と断じ、「もう1セットやった後、中断すべきだった」と言っています。

このようにして、体力のある若手に有利な5セットマッチから自分に有利な3セットマッチに持ち込んだベルダスコ選手は、持ち前の分析能力を発揮して、ズベレフ選手のフォア側ワイドに展開し、オープンになったバック側を攻める戦術を徹底し、見事に勝利をつかんだのでした。

実はベルダスコ選手が勝ち抜けば、4回戦で錦織選手と当たる可能性があります。去年の全仏でも3回戦で対戦し、ベルダスコ選手が2セットダウンから巻き返して、フルセットの死闘に持ち込んでいます。最終的に錦織選手が勝ちましたが、トータルポイントは1ポイント差でベルダスコ選手の方が多くポイントを取っています。

錦織選手の山では、4回戦で対戦可能性があったズベレフ選手が敗れ、3回戦で対戦可能性があったクエリー選手も敗れ、シードダウンにより錦織選手に有利な状況が生まれているようにも見えます。

ですが、ノーシードのベルダスコ選手がいます。ベルダスコ選手が4回戦まで勝ち上がって来たら、厄介な相手であることは言うまでもありません。
 
 
 

(了)

 
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