今日のキーワード「one-two punch」(3球目攻撃) - 「クビトバ、復帰戦で絶好の滑り出し、ボーズラップに勝利」 | テニス | 全仏オープン

こんにちは。tennisshiroです。
 
昨日から待ちに待った全仏オープンが開幕しました。
前哨戦のジュネーブ・オープンで準決勝敗退した錦織選手も、ローランギャロスに乗り込み、早速練習を行っています。

他の日本人選手の1回戦も始まり、ダニエル太郎選手、奈良くるみ選手が無事勝利し、2回戦進出を決めています。
また杉田祐一選手は、2セットダウンから1セット取り返し、4セット目1ブレークアップの4-2リードの時点で日没サスペンデッドになっています。今日の再開後、逆転勝利を収めてくれることに期待しています。

日本人選手以外ですと、女子シングルス第1シード・ケルバー選手の敗退などもありました。
ですが今日は、選手生命の危機すら心配された不慮の大ケガから復帰し、見事に勝利を収めたクビトバ選手を取り上げます。

ペトラ・クビトバ、全仏オープン(画像:WTA Tour, Inc.
 

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1.今日のキーワード
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【one-two punch    3球目攻撃】

今日のキーワードは「one-two punch」 です。
「punch」(パンチ)という単語からもわかる通り、一般的にはボクシング用語です。
一本目のパンチで相手の体勢を崩し、二本目のパンチで有効打を当てるコンビネーションのことを指します。
テニスでは、サービスで相手の体勢を崩し、甘くなったリターンを思い切って攻撃することを「one-two punch」と言います。
自分のサービスから3球目に攻撃すること、つまり「3球目攻撃」を意味します。

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2.ボキャブラリー
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・Petra Kvitova : ペトラ・クビトバ。チェコ国籍。27歳。左利き、両手バックハンド。グランドスラム優勝2回、ツアー優勝19回。現在16位 (最高2位)。
・Julia Boserup : ジュリア・ボーズラップ。アメリカ国籍。25歳。右利き、両手バックハンド。ツアー優勝なし。現在85位 (最高85位)。
Roland Garros : ローラン・ギャロス。全仏オープンの会場。しばしば全仏オープンそのものを指す。
・shotmaking : ショットメイキング。相手が打ちづらい場所・速度・回転のショットを打つ能力。
・for the second time : 2度、2回。
・winner : ウィナー。相手が触ることができないショット。サービスエースも含まれる。
・foray to the net : ネットプレー。ネット近くのエリアまで出ていくこと。
fend off : かわす、受け流す。
・inroad into the one's serve : ブレーク。相手のサーブを侵略・攻略すること。
・ace : サービスエース。
dropshot : ドロップショット。相手コートのネット近くにボールを落とすこと。
notch up : 達成する、記録する。
 
上記フレーズに関する知識があると、原文をより深く理解できます。

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3.原文
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【Kvitova comeback off to flying start with win over Boserup】 

ROLAND GARROS, France - Petra Kvitova firmly dismissed any doubts over her form with a 6-3, 6-2 victory over World No.86 Julia Boserup on the first day of play at Roland Garros.

In a wide open Roland Garros draw, perhaps the most significant question mark was regarding the No.15 seed's form. Kvitova's recovery from the severe injuries to her left hand that she sustained in a home invasion in December is one of the most heartwarming stories of the tournament - but she had only confirmed her participation in the draw on Friday, and there were few indications as to the level of her trademark power and shotmaking.

"This match was special to me, I won for the second time, if I can say that," she said. "It was a nice and really heartwarming welcome.

"My team was there. My family was there. Everyone who helped me through the difficult time. So it was a real pleasure to play in front of them and play how I played. I think I played well after six months off. I'm happy with the game, of course, but I mean, it wasn't really about the game today."

The Czech player answered all those questions about her form swiftly. The first point of her comeback was a classic one-two punch, and she quickly leapt out to a 3-0 lead in a flurry of winners - 11 in the first 15 minutes alone.

In the first set, Kvitova struck a total of nineteen blazing winners and won on each of her five forays to the net. Initially overwhelmed by her opponent's sharpness and power, Boserup fended off three break points to hold in the fourth game, but though she settled into her rhythm on serve, she was unable to make inroads into the Czech's serve as Kvitova fired down seven aces.

In the second set, the No.15 seed continued where she left off, displaying beautiful touch on the dropshot to break Boserup immediately. A brief rain shower wasn't enough to halt her momentum as she eased towards the finishing line, notching up nine aces and 31 winners in total.

"Yesterday I was thinking how everything will be and I couldn't really imagine how it was going to be," said Kvitova.

"I maybe thought that I would cry when I stepped on the court, but I didn't today, which I was happy about, because normally I can control my emotion on the court, so I'm happy that I kind of did it, as well, this time.

"In the end, I didn't have to. So, yeah, a few tears for after the match point. Of course, going as a winner from the center court was much better than stepping on the court."


(引用元 WTA Tour, Inc.:
 

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4.日本語訳
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【クビトバ、復帰戦で絶好の滑り出し、ボーズラップに勝利】 

フランス・ローランギャロス  -  全仏オープン初日の試合、ペトラ・クビトバは世界86位ジュリア・ボーズラップに6-3、6-2で勝利し、彼女のコンディションに関する疑念をきっぱりと振り払った。

全仏オープンの多くの参加選手の中で、第15シードのクビトバのコンディションにはおそらく最も大きな疑問符が付いていた。昨年12月、強盗が自宅に不法侵入した際、クビトバは利き手である左手に重傷を負った。彼女の復帰は今大会の最も感動的な話の一つである。しかし先週金曜日、彼女は大会への参加を確約しただけで、持ち味であるパワーやショットメイキングのレベルについてほとんど言及しなかった。

「私にとってこの試合は特別だった。大げさに言ってもいいなら、私は2試合分の勝利をした」と彼女は語った。

「素敵な心からの歓迎を受けた。私のチームがいた。私の家族がいた。私が困難な時期を乗り越えるのをみんなが支えてくれた。だから、彼らの前で今日プレーできたのは、本当にうれしかった。6か月離脱していたけど、今日は良いプレーができたと思う。もちろん試合結果はうれしい。だけど本心を言えば、今日本当にうれしいのは、試合結果ではないの」

クビトバは自身のコンディションに関する質問に、きちんとすべて答えた。復帰後初ポイントは、華麗な3球目攻撃で決めた。試合開始から15分のうちに11本のウィナーを決めて、すぐにゲームカウント3-0のリードを奪った。

第1セット、クビトバは合計19本の強烈なウィナーを決め、5本のネットプレーもすべてポイントにした。序盤ボーズラップは相手の鋭い動きとパワーに圧倒されたが、第4ゲームは3つのブレークポイントをしのぎ、サービスをキープした。ボーズラップは自分のサービスゲームでは落ち着きを取り戻したが、7本のサービスエースを決められて、クビトバのサービスゲームをブレークできなかった。

第2セットに入り、第15シードのクビトバは芸術的なタッチのドロップショットを見せて、ボーズラップのサービスをすぐブレークすると、攻撃の手を緩めなかった。にわか雨が降ったが、クビトバの勢いは止まらず、合計9本のサービスエースと31本のウィナーを決めて、簡単に試合を終わらせた。

「昨日、すべてがどうなるか考えたけど、本当にどうなるか想像もできなかった」

「コートに入るとき、泣くかもしれないと考えた。でも実際には泣かなかった。そのことに安心した。通常なら私はコート上で感情をコントロールできるので、今日も今までと同じようにそれができてうれしかった」

「だけど試合が終わったとき、感情をコントロールする必要がなくなった。だから勝利が決まると、少し涙が流れた。もちろん、コートに入るときより、勝利者としてコートを去るときの方が、断然気分が良かったわ」とクビトバは語った。


(Translated by tennisshiro)

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5.関連動画
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Petra Kvitova's return to tennis starts with an emotional victory over Boserup in 1R


クビトバ選手が復帰戦で勝利した瞬間の様子です。
試合中に抑えていた感情があふれ出し、それを噛みしめている表情に感動しました。
 

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6.その他のニュース
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7.編集後記
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去年12月に起きた痛ましい事件により、利き手の左手の指4本と左腕に大ケガを負ったクビトバ選手。命に別状はないものの、指の神経に達する損傷を受けたと聞き、1テニスファンの私は、何とも言えない感情になったのを覚えています。
 
テニス選手にとって、利き手の指は命と同じくらい大切なもの。痛みが走ればパワーショットを打つことができないですし、神経に後遺症が残れば繊細なタッチでラケットを扱うことができません。最悪の場合、単純にラケットを握ることさえできなくなります。

事件直後のクビトバ選手の気持ちを考えると、胸が締め付けられる思いでした。年齢とともに体力が落ちる、モチベーションが上がらない、ケガのためにトップレベルで戦えない等々、引退には様々な形があります。ですが、自分の意思に反して、犯罪者の凶行により選手生命を絶たれることだけはあって欲しくないと思っていました。
 
それから半年経った全仏オープンで、クビトバ選手がツアーに帰って来ました。復帰のニュースを聞いたとき、テニスができる状態までケガが回復したことに安堵すると同時に、トップフォームからほど遠いプレーしかできない状態だったら切ないなあ、という複雑な気持ちを抱いていました。
 
ですが、幸いなことに、その心配は杞憂に終わりました。試合の模様をTVで見ている限り、強いボールをどんどん打っていましたし、繊細なタッチが必要なドロップショットも見事に決めていました。ケガの影響はないように見えますし、トップ100選手を圧倒するトップ10選手の試合を繰り広げていました。昨日の1試合を見る限りは、事件前と変わりのない強いクビトバ選手でした。

ただ、半年間ブランクがあったのは事実です。練習と試合は別物なので、久々の実戦を1試合やっただけで、リバウンドが起きることも考えられます。しかも復帰したのは、プレーレベルも緊張感も非常に高いグランドスラムです。

クビトバ選手の元気な姿が見れて、我々テニスファンは安心しました。不屈の精神力と肉体で復帰した強い人なので、余計なお節介かもしれませんが、無理だけはしないで下さい。クビトバ選手が2回優勝しているウィンブルドンは1か月先です。焦る必要は全くありません。
 
 
 

(了)

 
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